マンションは「箱」なのだ

 マンションは、内装や設備や間取りといったこと以前に、コンクリートで囲まれた一つの箱として、その住み心地を検討されるべきものだ。コンクリートで囲まれた箱が、次のような三つのポイントをどの程度クリアしているかで、各住戸の住み心地はおおよそ決まってしまうといってもよい。

 一つは、各箱がいかに良好な環境を維持しているか、である。風通しや採光に配慮した窓が確保されながら、その一方で外部環境から隔離されることでプライバシーを保てているかが重要なポイントとなる。近ごろは音に対する関心が高まっていることから、各箱の遮音性能には配慮のあるマンションがずいぶん増えた。ところが、上の階から伝わってくる音についてチェックする人は多いのに、外部廊下や隣の住戸からのプライバシーの確保となると、確認しないまま購入してしまう人が多いのである。

 もう一つは、箱にたどり着くまでの道筋、つまりアプローチが魅力的であるか、ということ。建物のメインエントランスにいたる外部のアプローチや、エレベーターホールや外部廊下といった建物に入ってからのアプローチが、いかに魅力的であるかでマンション生活の快適性は大きく左右されてしまう。
 そしてもう一つは、その箱に住む人たちの生活にトラブルが生じないような、管理上の仕組みが追求されているか、である。販売当初から管理上のルールや管理会社としての役割が、将来に起きることの多いトラブルを可能なかぎり回避するよう設定されているかが重要なのである。

 この三つが、マンション生活の快適性を決める基本性能なのだ。私は最初の二つを、箱として見た場合の建築的な基本性能、あとの一つを管理的な基本性能と呼んでいる。
 たとえば、コンクリートで囲まれた箱がどのように外気に接しているのかで、その住まいの風通しの善し悪しは九割がた決まってしまう。中の間取りで工夫できるのは、せいぜい残りの一割程度である。

 プライバシーの確保という、住まいとしての基本的な要件についても同じことがいえる。各住戸が一つの独立した箱として外部廊下や前面道路、隣接住戸といった外部環境からいかに隔離されているかをチェックしないで、サッシや床のフローリングの遮音性能だけを議論してもしかたがない。